外伝その4 プロレスとテレビ局

かつてプロレスとテレビ局の関係には、切っても切り離せないものがありました。古くは街角テレビで放映された力道山の勇士が多くの日本人を元気づけたのは周知のごとくですが、その後、日本プロレスが新日本プロレスと全日本プロレスに分裂してからも、それぞれ日本テレビ、テレビ朝日と組むことになり、プロレスとテレビ局の蜜月関係は続きました。テレビ局にとってのプロレス中継は、低予算でそれなりの視聴率が見込まれる優良コンテンツであり、プロレス団体にとってのテレビ中継は、安定した放映権料が見込まれる上に、この上無い宣伝媒体として無くてはならないものでした。

プロレス用語的には、かつては新日本プロレスと全日本プロレスのことをメジャー団体と呼んでおりましたが、メジャーとインディーとの差とは、バックにテレビ局が付いているかどうかの違いなのです。新日本プロレスを例にとれば、最盛期においてはテレビ朝日からの放映権料は年間3億円にも及び、そのうえ毎週お茶の間にその姿を露出して名前を覚えて貰えるのです。プロレス中継が深夜枠に追いやられてはや25年が経過しても、未だに長州力や藤波辰巳にネームバリューがあるというのが、このテレビ中継における宣伝効果がいかに凄いかを表しているでしょう。

ノアが壊滅状態に陥ったのに新日本プロレスが生き残ったのは、テレビ局の支援があったかどうかが勝負の決め手でした。もしも日本テレビがノア中継を打ちきらなかったら、三沢さんが事故死することも無ければ、現在のような惨状には陥って無かったかもしれません。
またそれとは逆に、もしもテレビ朝日が何処かのタイミングで新日本プロレス中継を打ち切っていたのなら、新日本プロレスは間違いなく崩壊していたでしょう。一時期はかなりヤバいレベルでボロボロ状態だった新日本プロレスが何故生き残れたのかと言えば、それは一重にテレビ朝日のおかげだったのです。
「毎週月曜日に、テレビ朝日から○百万円の現金が確実に振り込まれていることが何よりもありがたかった。」
坂口征二会長はそのように語っております。

テレビ局との縁が切れたことにより崩壊した団体はノアだけではありません。FMWの倒産は、ディレクTVの連鎖倒産と言ってもイイものだったし、リングスの息の根を止めたのもWOWOWの撤退でした。そのリングスを窮地に追い込み、あれだけの全盛を誇ったプライドが、ああもあっけなく消滅したのはフジテレビとの縁が切れたからです。その飛ばっちりを受けたようなハッスルも、東海テレビが撤退することが無ければ経営が安定し、その後のプロレス界を変えていたかもしれません。

これはプロレスに限った話ではありませんが、テレビの力は絶大です。今でこそマイナージャンルに落ち込んでしまったプロレスですが、テレビ局の動きいかんによっては、再びメジャージャンルに返り咲く日が来るのかもしれません。


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