世界に乱立するチャンピオンベルトを一つに統一し、真の世界チャンピオンを決めようという壮大な構想の下に設立されたＩＷＧＰリーグ戦。アントニオ猪木は新日本プロレス内にあった６本のチャンピオンベルトを返上し、形式的ながらも日本、北米、米国、中南米、欧州代表を決めるため、２年をかけてチャンピオンズリーグの予選を行います。運命の１９８３年６月２日、日本代表のアントニオ猪木と米国代表のハルク・ホーガンの二人による決勝戦が蔵前国技館にて行われ、誰もが猪木の優勝によるグランドフィナーレを信じて疑いませんでした。・・・が、ココで事件が起こります。一度場外に落とされてリングに戻ろうとした猪木にハルク・ホーガンがロープ越しにアックスボンバーを見舞うと、なんと！場外に叩き落とされた猪木はベロンと舌を出したまま起き上がってこず、そのままホーガンのリングアウト勝ちとなってしまったのでした。慌てたレスラーたちが猪木の下にかけより、応急処置を行って病院へと搬送して行ったのです。こうして栄えあるＩＷＧＰを戴冠したのはハルク・ホーガンとなったのです。
さて言うまでも無いことですが、このＩＷＧＰはプロレスのリーグ戦です。当然、予選から決勝リーグまで、全て筋書きは決まっておりました。それはもちろん、猪木が真の世界チャンピオンになるというストーリーです。ところがそのストーリーが最後の土壇場になって崩れてしまったのですから、新日本プロレスの関係者は大慌てでした。対戦相手のハルク・ホーガンにしても、

「まずい！オレはなんてアクシンデントを起こしてしまったんだ！！　ニュージャパンの社長兼エースをこんな目に遭わせてしまったんだ・・・ギャラを貰えないことはおろかプロレス界全体から干されてしまうかもしれん！！」

と顔が真っ青になったことでしょう。
実際、この猪木失神事件はテレビや新聞においても試合中のアクシデントとしてニュースが流されたのですから。
・・・が、実は、これは猪木自身による演技だったのでは？　当時、借金で首が回らなくなっていた猪木が、借金取りの目をくらませるために一芝居打ったのではないかという説も出ているところでありますが、そんなに難しい話ではなく、たんなる猪木の天邪鬼だったと考えた方が自然なように思えます。
当時の猪木の状況、猪木の裏をかく性格を考えればさもありならんという感じですし、実際にそのようなアクシデントで人が失神した場合、あのように舌がダラリと出るような状態にはならないとういのが関係者の一致した見方です。
ともあれ、真相は猪木しか知らぬことで、猪木自身に訪ねてみても、明確な回答は得られておりません・・・ただ一つ、ＩＷＧＰリーグ戦での猪木優勝というブックを書いたマッチメーカーの坂口征二が、「人間不信」という書き置きを残して数日間失踪したという事実が残されているのみです。
アントニオ猪木が永眠してしまった今となっては、その真相が解き明かされることはありません・・・