スターダム 世W虎vs安川惡斗の凄惨試合 2015年2月22日 (2015.2.27執筆 2023.10.28追記)

2015年2月22日、女子プロレス団体、スターダムの後楽園ホール興行のメインイベント・世W虎(ヨシコ)vs安川惡斗のタイトルマッチにおいて、凄惨なシュートマッチが発生してしまいました。

とりあえず筆者の当該事件に関する知識についてなのですが、スターダムという団体名はおろか、ヨシコ、安川というレスラーについても初めて聞く名前というレベルでして、この事件があってから慌ててウィキペディアとヨシコ、安川のブログをチェックしてみたというレベルです。
また、試合そのものについては、YouTubeでダイジェスト動画は見ていますので、おおよその状況は把握できているという程度です。

以上を前提に、ヤフーニュースのトップで連日報道されるまでに注目されることになったこのシュートマッチ事件について、筆者が元・プオタ視点において検証してみます。

★何が問題なのか?

◆選手の大怪我

試合後の安川の顔写真が公開されておりましたが、それはそれは酷いものでした。素人目に見ても再起不能レベルのヤバい怪我なのが分かります。実際、安川は眼底や鼻などを骨折したばかりか、片目は失明するのではないかと言われております。
事故にせよ故意にせよ、本試合では、安川がこのような選手生命に関わる大怪我を負ってしまったことが第一の大問題点です。

◆興行として

次にこの試合が、お客さんからお金を貰って見せられるシロモノだったのかという問題があります。本試合をYouTubeのダイジェストで見た限りでは、これは明らかに通常の「プロレスの」試合ではありませんでした。
百歩譲って、通常のプロレス試合の範囲内において安川が大怪我を負ってしまったというのならまだ分かります。でも、本試合は明らかに、ヨシコは安川を潰す目的で戦っており、そこには観客に魅せるという意識がありませんでした。マウントポジションで安川を抑えつけ、ひたすら血にまみれた顔面を叩きつけるヨシコの姿は、観客の目には鬼か悪魔に映ったことでしょう。

事故にせよ故意にせよ、お客さんからお金を貰っての「興行」における、しかもタイトルマッチというメインイベントにおいて、観客無視の私闘が行われたというのが第二の問題点です。

★なぜそれが問題なのか?

◆プロレスラーなんだから怪我するのは当たり前?

当たり前のことですが、プロレスとは格闘演劇です。格闘演劇とは、お互いに相手に怪我をさせないようにと思ってワザをしかけているからこそ成り立つものなのです。これがもし、お互いが本気で相手を潰そうと思ってワザをかけあっていては、プロレス技などは絶対に決まるものではありません。
投げられる方は、相手がケガをしないように投げてくれると「信頼」しているからこそ投げられてくれるのであり、もし相手が自分を潰そうと思って投げて来るのなら、全力で投げられないように踏ん張ることでしょう。
また、打撃ワザにしても、相手がケガをしない程度に、筋肉の厚い部分を殴る蹴るしてくると分かっているからこそ、ノーガードで殴られ蹴られしてくれるのです。
それでもやはりプロレスは人間のやることだから、怪我するときは怪我します。でもそれは、結果として怪我をするのであって、故意に相手を怪我させようとするレスラーはおりません。にも関わらず、本試合でのヨシコは、明らかに相手を怪我させるどころか殺しかねない勢いで安川を潰しに行ったからこそ問題になっているのです。

◆面白ければいいじゃない?

ネット上でこの事件についての感想を見ていると、中には

「たまにはこんな本気の戦いがあってもいいんじゃないか?」

とか、

「今の新日本プロレスには殺気が足りないことが良く分かる。」

みたいな意見もチラホラ見かけているところです。なるほど確かに、その意見も間違いではないと思います。でもそれは、あくまでこの試合を単体の興行で見た場合の話です。
たまにはシュートマッチが見てみたいという意見については、かつての橋本小川戦などをワクワクドキドキ見てしまった筆者にもその気持ちは分かるのですが、ならその後、新日本と小川の抗争がどうなったのかを見ればその答えが出ます。
(実際はそうではないのですが)本気で橋本を潰しに来た小川は、これからも新日本プロレスのリングにおいて、迎撃に来たレスラー相手に暴走ファイトを繰り広げてくれるのではないかと、小川の「暴走王」キャラに期待したファンが当時は結構いました。
でも実際は、新日本プロレス本体もレスラーも、その小川の暴走を警戒して消極的かつ不透明な戦いを連発することになってしまい、ファンを多いにガッカリさせたのです。

一度このようなガチファイトを見せられたら、次はもっと過激なものをと望むのが観客というものです。なので「たまに」こんな本気の戦いをされたんじゃあ、次もまた同じ戦いを見せないと観客は物足りないものを感じてしまいます。
でもこんなガチな凄惨ファイトなどというものは、お互いが本気で憎しみ合ってのアクシデントで無い限りは起こり得ないものです。そうなると、そんなシュートマッチを肯定的に受け入れたファンにしてみれば、もう同じ刺激が味わえないことに失望し、もともとそんな試合は見たく無かったというファンには、せっかくのハレのタイトルマッチを潰されてしまったという失望感しか残らないのです。

◆その後に繋げればいいじゃない?

仮にこれからヨシコを暴走王キャラとして売り出そうとしても、そのように暴走してくる可能性のある相手に熱血ファイトが出来るレスラーはいないと思います。もし、それが出来るとしたら、それはヨシコと100%の信頼関係があり、ヨシコが絶対に自分に対してキレてシュートを仕掛けて来ないと分かっているレスラーだけでしょう。でもそれでは本気の「暴走」ファイトではないという矛盾を抱えてしまいます。本気の潰しあいとは、お互い憎しみ合っている者同士でしか発生しないものなのですから。

また、同じように、ココで安川が見事に復活してヨシコにリベンジマッチをする流れになれば盛り上がるのではないか?という意見も見かけますが、それが成立しないこともご理解頂けるのではないかと思います。
もしあなたがレスラーならば、一度本気でキレて自分を潰しに来た相手に対し、思いきってワザを打ちこんで行くことなどできますか? またキレられたらどうしようと及び腰になるのが普通の人間なのではないかと思います。
レスラーは普通の人間ではないだろうという反論もあるかもしれませんが、レスラーとは、プロであればプロであるほど、「プロレスの」試合を成立させようとするものなのです。
それなら橋本と小川の関係はどうなんだ?と言われれば、小川はあくまで猪木に従ったブック通りに戦っているので、決してブック破りをした訳ではありません。もしも小川が個人的に橋本に恨みを持ってボコっていたのだとしたら、あのような和解劇にはならなかったのではないかと思います。

◆ヨシコ追放は厳しすぎる?

やらかしてしまったヨシコについて、出場停止はともかく、引退までさせることは無いだろうという意見を多くみかけます。そんなことをしたら、プロレスとはガチではなくて馴れ合い演劇だと言ってるようなものじゃないか!というのがその論拠なのですが・・・
筆者はやはり、ヨシコは永久追放するべきだと思います。なぜならこのヨシコの行為を認めてしまっては、また同じことをやるレスラーが出て来るかもしれませんから。
例えばもし、すでにAというライバル団体に移籍が決まっているBというレスラーが、現在所属するCという団体でのラストマッチを行うに当たり、どーせ最後だからと自らの商品価値を上げるためとA団体への手土産のために、シュートマッチをしかけてCのエースを再起不能にするなどということも考えられます。
シュートをやることによって商品価値があがるなどという悪しき前例が出来てしまったら業界は無茶苦茶になってしまいます。やはりヨシコのようにヤラかした選手は永久追放するのが妥当なのではないでしょうか。

もっともこれを言うと、じゃあ猪木と前田はどうなんだ?という反論がありそうですが、まず無抵抗のダウン状態のグレート・アントニオの顔面にシュート蹴りを放った猪木について。
あれは決して褒められた行為ではありませんが、それをやった猪木とは、そもそも団体のトップ自身です。ということなので、自分が自分を干すことはできません。また、当時の猪木にすれば、他団体に上がる可能性など殆どゼロに等しかったですし、そもそもグレート・アントニオ自身が制裁されても仕方ない立場だったので、その行為を咎める者もおりませんでした。その点が、団体の米櫃候補を潰そうとしたヨシコとは全く違います。
また、前田の長州顔面蹴撃に関しては、アクシデント的要素が強く、前田が長州を故意に潰そうとした蹴りでは無かったという見方が大勢的です。ヨシコのように、レフェリーに止められながらも執拗に安川の顔面を殴り続けたヨシコと一緒には出来ません。でもそんな前田ですら、永久追放が検討されたのですから、いかに選手を潰そうとする行為が重罪なのかが分かるというものでしょう。

★なぜこんな事件が起こったのか?

ネット上を飛び交っている様々な意見を見ているのは非常に面白いものです。その中でも代表的なものを取り上げてみると、

◆最初に安川がヨシコに本気で殴りかかってシュートを仕掛けたところを返り討ちにされたのでは?

◆もともと安川に対する制裁マッチとしてガチ風味の試合がマッチメークされていたが、思いの他にヨシコが強くて安川が弱かったためにこのような事故になったのでは?

◆マッチメークに不満を持ったヨシコがブック破りを敢行したのでは?

だいたいこの3つに集約されるのではないかと思います。
以下、筆者がプロレスの常識と、ウィキペディアと先週ブログで調べた限りの付き焼き刃の状況把握を基に考察してみます。

★ヨシコと安川、それぞれの試合に賭ける思い

この事件を考察するに当たって一番重要なことは、そもそもこのヨシコvs安川にはどのようなブックが描かれていたのかということでしょう。
まずこのタイトルマッチについてのヨシコの立場なのですが、試合直前のヨシコのブログを見る限りでは、以下のとおりマッチメークに対する不満がブチまけられています。

22日のスターダム後楽園ホール大会
自分は安川惡斗と赤いベルトのタイトルマッチの流れになってるけど
先日の会見に安川が欠席したことによって
まだ調印式もしてない状況です。
自分は、このまま調印式をやらなかったら
タイトルマッチはやりません。
本当に、赤いベルトが欲しいならうちとシングルでやりたいなら
調印して、それなりのものを見せてもらわないと。
うちはタダで試合したくないんで。


このブログの発言はガチと見られます。
通常なら、選手ブログというものは、ファンの期待を高め煽って集客に努めることを書くものですが、このブログにはそのような気使いが一切見られません。
相手を叩きつぶすとかブっ殺すなどと書いてあればまだ話は分かるのですが、試合そのものをやりたくないと言っているくらいなのですから、ヨシコはよほどこのマッチメークに不満を持っていたのでしょう。

次に安川なのですが、このタイトルマッチは白内障の手術を終えて第三戦目という復活を賭けた戦いであり、そのうえこれから出演映画の公開を控えているという重要な立場です。ココはひとつ、何らかの見せ場を作って安川ココにあり!をアピールする必要があるでしょう。

★ヨシコと安川のレスラーキャリア

◆生え抜きぽっちゃり不良少女ヨシコ

まずはヨシコなのですが、多々の補導歴アリな不良少女というノーバックボーンながらも、スターダム一期生の生え抜きで、21才にしてチャンピオンに昇り詰めたというエリートです。・・・残念ながらビュアルは微妙です。

◆元アイドルの美人レスラー安川

一方、それに対する安川は、元アイドルの28才。女子プロレスラーとしてのキャリアはヨシコと同じくらいですが、スターダムにおいては3期生で、ヨシコの後輩という立場です。もともとメンヘラ気質で欠場を繰り返しながらも安川は元アイドルという経歴のためにその扱いは常に優遇されていたようです。

ノンキャリアの実力一辺倒でトップに登り詰めたチョイブサぽっちゃりヨシコが、元アイドルという肩書だけでトップにいるであろう美人レスラー安川のことをどのような感情で見ていたことかは容易に想像がつきます。実際、ヨシコと安川がガチで仲が悪かったという証言は多々得られているところであります。

★マッチメークするのなら?

常識的に考えて、ヨシコと安川を比べたら集客力があるのは安川です。また、病気を乗り越えた復活マッチであり尚且つ出演映画の公開を控える安川を売り出そうとするのが普通の感覚でしょう。
安川は美人レスラーと呼ぶのに申し分のないビジュアルだし、これから映画も公開されることで、ますますスターダムに新規ファンを引っ張って来れそうな米櫃候補です。そんな状況化であえて安川をヨシコの下に持って来る理由は見当たりません。
ということで、勝つにしろ負けるにしろ、このヨシコvs安川のタイトルマッチの主役は安川であったであろうことはまず疑う余地はありません。

★タイトルマッチに賭ける意気込み

◆不満のヨシコ

まずヨシコなのですが、そもそも安川がタイトルマッチに出て来ること自体がおかしいと思っていたようです。もともとの実力に疑問があったであろうことは、実際の試合を見てみれば分かりますし、白内障の手術による長期欠場後のわずか3試合目でタイトルマッチというのは確かに早すぎるでしょう。そんな思いがキッチリとブログにも綴られていることですし、ヨシコがこのタイトルマッチに多いに不満を持って臨んでいたことは間違いのないところです。

◆気合の安川

一方の安川ですが、このタイトルマッチに賭ける意気込みは相当のものだったと思います。実際の試合を見ても、安川は顔面にいいパンチを何発も貰って鼻血ダラダラになりながらも、試合を「プロレスとして」成立させようと必死になっております。試合後のコメントを見ても、泣きごとらしいことは一切言っておりませんし、最後の最後までこの陰惨試合をプロレスの試合と位置付けようとしております。

★マッチメークを考察するに

このように状況を整理してみますと、

◆最初に安川がヨシコに本気で殴りかかってシュートを仕掛けたところを返り討ちにされたのでは?

ということはまず考えられません。安川はもしガチを仕掛けたら実力的に勝てるわけが無いことは最初から分かっていたでしょうし、それに何より安川がヨシコにシュートを仕掛ける理由が分かりません。
あえて言うなら、この期に及んでまだマッチメークに不満顔なヨシコに一発気合を入れてやろうと顔を張ってやった程度のことなら考えられます。
ネット上では、「あれはシュートをしかけたグーパンチだった!」などという意見も結構見られますが、仮にそれが本気のグーパンチだったとしても、シュートを仕掛けてのグーパンチなどでは無いことは間違いないでしょう。自分を主役にするためのメインイベントタイトルマッチを自らの手でブチ壊すなどというアホなレスラーはおりません。
なので仕掛けて来た安川を返り討ちにしたヨシコという構図もちょっと考え辛いです。

また、

◆もともと安川に対する制裁マッチとしてガチ風味の試合がマッチメークされていたが、思いの他にヨシコが強くて安川が弱かったためにこのような事故になったのでは?

などということもちょっと考えられません。
もしこれが、ちょっと図に乗って態度が生意気になってきた安川に対する制裁マッチという構図なのだとしたら、それをメインイベントに持ってくる意味が分かりません。まずは安川を制裁するという理由が分かりませんし、本当に制裁したいのならば、試合に出さないのが一番なのですから、メインに抜擢している時点でそれは制裁などではないのです。

◆タイトルマッチとメインイベント

また、ガチ風味の試合マッチメーク説にしても、もしそれをやるのなら、これまたメインイベントでタイトルマッチとしてやる必然性がありません。もともと安川に箔をつけるつもりが無いのなら、セミ以前の試合で十分なはずです。むしろそんなことで団体の切り札たるタイトルマッチを使っては、自らタイトルの権威を落としてしまうことになります。タイトルマッチとは、その団体が出しうる最高のカードなのですから。
そう考えるとやはり、このヨシコvs安川のタイトルマッチは通常のタイトルマッチで、安川が戴冠するはずだったという可能性が高いでしょう。

ただ、このヨシコと安川の間にあるガチな遺恨感情を、マッチメーカーが安易に利用しようとしたのでは?ということは十分考えられます。
スターダムの代表であるロッシー小川は元・全日本女子プロレスのマッチメーカーです。全女と言えば、選手間のガチな人間関係をマッチメークに反映させることによる疑似ガチファイトが会場を盛り上げていた団体でした。ロッシー小川が自分の知る全女全盛期時代と同様、ヨシコと安川の本気の遺恨がより一層試合を盛り上げてくれるのではないかと考えていたとも想像できます。
でも全女とスターダムには決定的な違いがあります。全女のレスラーたちは、何千人の入団希望者から選ばれたエリートばかりであり、さらにそのエリートが鬼より怖い諸先輩方に徹底的にプロレスの基本から上下関係までも叩き込まれていたのです。全日本女子プロレスとは、不良あがりの21才の少女やアイドル崩れの低キャリアレスラーが簡単にベルトを巻くことが出来るような甘い団体では無かったのですから。

★誰が悪かったのか?

以上、状況を整理すると、まずはこの事件が起こった大本の原因は、ヨシコのマッチメークに対する不満であるということは間違いありません。また、その後の安川の「自分も悪かった」とのコメントを見るに、そのヨシコのマッチメークに対する不満に対し、安川がプロ意識の欠如をなじったという側面もあったように思えます。あるいは、ヨシコに対して何かものすごい屈辱的暴言を吐いていた可能性もあります。
果たしてヨシコがもともと試合を潰すつもりだったのか?安川にシュートを仕掛けるつもりだったのか? については、さすがにヨシコもそこまでは考えていなかったのではないかと思います。
おそらくは、安川がこの期に及んでまだ不満顔なヨシコに対して一発気合を入れたのがクリーンヒットとなってしまい、そこでヨシコにスイッチが入って暴走してしまったというのが真相なのではないでしょうか? そこにグーパンだ!グーパンだ!と騒ぐ意味はあまり無いと思います。

今回の事件で一番悪いのは、凄惨なシュートマッチを仕掛けたヨシコであることは間違いないでしょう。でもこれは、21才の少女一人に責任を押し付けてイイ問題ではないことではありません。

◆未熟なメインイベンター

そもそも、このように精神未熟なプロ根性のカケラも無いレスラーをメインイベントに抜擢すること自体、いや”プロ”レスラーとしてデビューさせていること自体がおかしいでしょう。

◆統率力の無いマッチメーカー

マッチメークにおいて双方を納得させることが出来ず、先が読めない試合を無理矢理組んでしまったマッチメーカーの力量も問題です。

◆強権発動出来ないレフェリー

この試合を裁いていたのは、大ベテランながらも外様である和田京平レフェリーです。こんな素人目に見ても今すぐ止めなきゃヤバいことが一目瞭然な試合をダラダラ引っ張ったレフェリングになってしまったのは、和田京平がスポット参戦のレフェリーであって、「オレがルールブックだ!」と言える状況では無かったからからです。メインイベントのタイトルマッチを独断でノーコンテストにするようなマネは、ゲストの外様レフェリーには到底できるものではありません。
ドラゴンストップをかけられるくらいの、試合における絶対的権力者の不在もこの悲劇を生んでしまった原因の一つでしょう。

★プロレス界の問題点

こうして原因を上げてみると、強大な権力者が不在であるが為に現場を統率出来ていないというのが全ての元凶なのではないかと思います。

かつての新日本プロレスでは、山本小鉄さんのような鬼軍曹が脳筋中卒のならず者たちを、プロレスラーはレスラーであるまえに社会人たれの精神でキッチリと鍛え上げておりましたし、ジャイアント馬場は先輩後輩の序列に誰よりうるさい人でした。
アントニオ猪木は有無を言わさぬ強権でマッチメークを取り仕切っておりましたし、ジャイアント馬場はマッチメークに際しては、いつも選手の気持ちを丁重に考えておりました。
ミスター高橋は自分が選手にナメられたらレフェリングなど出来ないと、自らも強靭な肉体を作り上げ、外人選手との信頼関係を築くためには一緒に酒も飲んでおりました。藤波辰巳はファンのブーイングを浴びながらも、橋本長州の不穏試合を無理矢理ドラゴンストップで締めました。

女子プロレスが零細他団体業界である限り、このような団体の統制不足によるお粗末な事件はまだまだ起こるものと思われます。誰かが天下統一し、有無を言わさぬマッチメークと選手統制をしなければ、女子プロレス界に未来はないでしょう。


※2023.10.28追記

最近、この試合の完全版を見る機会を得たのですが、ヨシコは試合途中で正気に戻ったようで、ちゃんとしたプロレスの試合に方向修正しようとしていたんですね。それに対して安川の方は最後まで頭に血が沸騰状態でした。
という訳で、↑の文中にて、安川はプロレスをしようとしていたというのは間違いでしたねすみません。どうやら筆者は、試合後に安川が「プロレスやれ!!」と何度も絶叫していたのを見て錯覚していたようです。
とは言ったものの、本件に関する筆者の見解は当時と変わってはおりません。やはりこれは、マッチメーカーが安易な考えで選手の感情を逆なでしてしまった結果、未熟なメインイベンターが起こしてしまった不幸な事件だったと思います。

  


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